FP3級への道 ~リスク管理~ Chapter4

fp

損害保険の基礎知識

損害保険の保険料も生命保険と同様に大数の法則収支相等の原則に基づいています。

さらにこの2つに加えて、下記の原則もあります。

  • 給付・反対給付均等の原則保険料は被保険者のリスクの大きさや事故発生の確率に応じたものでなければならない
  • 利得禁止の原則保険金の受け取りによって利益を得てはならない。(実際の被害額以上に保険金を受け取ってはいけない)

そして、損害保険で受け取った保険金は非課税です。(死亡保険金以外)

保険金額と保険価額

損害保険は保険金額と保険価額との大小関係によって、全部保険超過保険一部保険に分かれます。

保険金額は保険会社が支払う限度額です。保険価額は保険の対象の評価額です。

全部保険保険金額保険価額保険金額と保険価額が等しい保険
保険価額を限度として実際の損害額が
支払われる実損てん補 全部補償
超過保険保険金額保険価額保険金額が保険価額より大きい保険
保険価額を限度として実際の損害額が
支払われる実損てん補 ←保険価額を上回る保険金額は無効
一部保険保険金額保険価額保険金額が保険価額より小さい保険
保険金額の保険価額に対する割合に応じて
保険金額が減額される比例てん補 一部補償

損害保険の種類

火災保険

住宅物件の火災保険は居住用の建物と建物内の家財を対象に火災や自然災害を補償するものです。

住宅火災保険住宅総合保険の主な2つの保険の違いを覚えましょう。

住宅火災保険火・風・雪・雷火災以外にも、風災、雪災、ひょう災、落雷
爆発、破裂などの自然災害が補償される。
(水災、地震、噴火、津波は補償対象外)
住宅総合保険火・風・雪・雷
盗難・飛来・外出中
上記に加えて、水災、盗難、飛来、
持ち出し(旅行、買い物中の破損、盗難等)による
家財の損害も補償される。
(地震、噴火、津波は補償対象外)
地震、噴火、津波、およびそれらを原因とする火災を補償するためには、特約として地震保険の加入が必要

支払われる保険金火災保険では保険金額が保険価額の80%以上なら実損てん補80%未満なら比例てん補となります

支払われる保険金額=損害額×(保険金額/(保険価額×80%))

失火責任法

  • 軽過失による失火(過失から起こした火災)の場合は、「失火ノ責任ニ関スル法律」(失火責任法)によって、隣家を全焼させても、失火者は隣家に対して損害賠償責任を負わない。
  • 借家人が借家を焼失させた場合は、家主に対する損害賠償責任が生じる

注:重過失や故意の場合は損害賠償責任を負う

もらい火事でも火元に請求出来ないため、火事にはくれぐれも注意しましょう。

地震保険

地震、噴火、津波、およびそれらを原因とする火災による被害を補償するものです。単独では加入できず必ず火災保険の特約として加入します

地震保険は住居のみに使用される居住用建物(店舗併用住宅も可)とその住宅内の家財が補償対象です。ただし、現金、有価証券、1個の価格が30万円超える貴金属や絵画、自動車は補償の対象外です。

地震保険の基本料率は建物の構造と所在地によって決まります。

また、建築年割引、耐震等級割引、免震建築物割引、耐震診断割引、という最大50%の保険料割引制度があります。それぞれの割引制度の重複適用はできません

  • 契約できる保険金=主契約の火災保険金額の30%~50%の範囲内
  • 支払保険金の上限=建物5,000万円、家財1,000万円
  • 保険金額=全損は100%、大半損は60%、小半損は30%、一部損は5%

地震保険の保険料は地震保険料控除として所得控除できます。

  • 所得税=地震保険料の全額、所得保険料控除は50,000円
  • 住民税=地震保険料の半分、住民税控除限度額は25,000円

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)

自賠責保険自動車損害賠償保障法により、自動車、二輪自動車(原付含む)の所有者と運転者に加入義務が課されている強制保険です。

他人の身体や生命に障害を与えた場合の保険なので、物品の損害、本人のケガ、自損事故は対象外です。

死亡事故の場合被害者1人あたり3,000万円
傷害事故の場合被害者1人あたり120万円
後遺障害のある場合は75万円~4,000万円

赤線の補償額は覚えましょう!

任意保険(任意加入の自動車保険)

自賠責保険の保険金を超える分の補償=対人賠償保険

自身の過失による死亡事故の補償=人身傷害補償保険

対人賠償保険他人(家族以外)を死傷させてしまった場合、
被害者に自賠責保険の支払限度額を超える分が支払われる保険
対物賠償保険他人の車や壁、ガードレール等、人の物を破損させてしまった場合の
賠償額を補償する保険
自損事故保険自損事故(単独事故)を対象とする保険。
自分や搭乗者の死傷の補償をする
無保険車傷害保険十分な賠償のできない他車(加害者)に衝突されて、
死亡・後遺障害を被った場合を対象とする保険
搭乗者傷害保険被保険自動車(契約車)に乗車中の人(運転者・同乗者)が
死傷した場合を対象とする保険
車両保険盗難・衝突・火災・爆発・台風・洪水などの事故による
契約車両の損害に対して補償される保険。
自宅敷地内での自損事故も補償される
人身傷害補償保険被保険者や家族が自動車事故で死傷した場合、
自身の過失部分(操作ミスなど)も含めて(過失割合にかかわらず)
損害額全額(入院・通院費等の治療費、休業補償、慰謝料など)が支払われる保険
リスク細分型
自動車保険
性別、年齢、運転歴、地域、使用目的、年間走行距離、
その他属性によって保険料を算定する保険。
一般的に通勤使用よりもレジャー使用の方が割安になる

賠償責任保険

偶然の事故で他人の財産や身体を傷つけ、損害賠償責任を負った場合を対象とするのが賠償責任保険です。

個人賠償責任保険日常生活の事故で他人の財産や身体を傷つけた場合の賠償責任を補償する保険。
自身のほか生計を共にする家族(別居の未婚の子も含む)の賠償責任も補償する。
業務上の事故、自動車事故は補償対象外です。
補償例:子供が店で商品を壊した。飼い犬が他人にケガをさせた。
水漏れで下の住人に損害を与えた。

対象外:借りている物を壊した。家族の物を壊した。運転中、仕事中、国外、
喧嘩での事故、地震、噴火、津波による損害
生産物賠償責任保険
(PL保険)
企業等が製造・販売した商品による事故が発生した場合に、
損害賠償金や訴訟費用を補償する保険
補償例:製造した弁当やレストランの料理で食中毒が発生。
工事の不備が原因で事故。

対象外:リコールの費用。欠陥品の修理費用
受託者賠償責任保険他人から預かった物に対する損害賠償責任を補償する保険
補償例:ホテルが顧客から預かった荷物の紛失・盗難・破損等の損害賠償
施設所有(管理)者
賠償責任保険
施設の管理の不備、または従業員の業務活動中のミスによる
損害賠償責任を補償する保険
補償例:施設内の遊具や落下物によるケガ。
従業員の不手際やミスで店舗内の客がケガ。

補償例と補償対象外は割とテストに出るのでよく理解しましょう!

傷害保険

損害保険は様々なケガを被った場合に保険金が支払われます。(偶然な外来の事故による障害)

保険料は原則として職業や職種によって異なります。性別や年齢では変わりません。

普通傷害保険国内と海外での日常生活(旅行中も含む)での障害を補償する保険
病気・地震・噴火・津波は対象外
補償例:運動中のケガ。旅行中のケガで破傷風に感染して入院。
出張先の火災でヤケド。

対象外:虫垂炎等の病気。インフルエンザ。細菌性・ウイルス性
食中毒。熱中症。靴擦れ。地震・噴火・津波によるケガ
家族傷害保険普通傷害保険と同じ補償を本人・配偶者・生計を共にする同居の親族・
別居の未婚の子
が受けられる保険
保険料は被保険者本人の職種級別を基準に算出される
海外旅行(障害)保険海外旅行の為に自宅を出発してから帰宅するまでの間に負った
ケガ・病気を補償する
保険

食中毒・地震・噴火・津波は補償対象
国内旅行(障害)保険国内旅行の為に自宅を出発してから帰宅するまでの間に負った
ケガを補償する保険

食中毒は補償対象地震・噴火・津波は対象外
交通事故傷害保険国内と海外での交通事故、移動中の事故(建物内・エレベータ・
エスカレータ)を対象とする保険
ファミリー交通傷害保険は家族も補償対象

補償対象補償対象外を注意しましょう。

保険の種類によって違う補償対象・対象外を覚えましょう!

第三分野の保険

第一分野の保険は「生命保険」、第二分野の保険は「損害保険」、第三分野の保険は生命保険会社、損害保険会社のいずれも扱うことのできる保険です。

医療保険

医療保険は病気やケガにより入院した場合や手術を受けた場合に給付金が支払われる保険です。

1入院につき60日などの日数限度決められている商品です。

終身医療保険は補償内容を変更しなければ主契約の保険料は一定です

医療保険では退院日の翌日から180日以内に同じ病気で再入院した場合は1回の入院とみなされるため、入院給付金の支払日数が前回の入院と合算されて、1入院あたりの給付日数制限を受けることがあります。

がん保険

がんと診断されたときの診断給付金、入院した時の入院給付金(支払い日数は制限なし)、手術を受けるたびに支払われる手術給付金などがあります。がん保険には一般に契約日から3か月(90日)の免責期間(待期期間)があり、免責期間中にがんと診断された場合、給付金は支払われず、契約自体が無効になります。ただし、それまでに支払った保険料は返ってきます。また、初期のがんには保険金が出ない保険もあります。

介護保障保険

民間の介護保障保険(介護保険)は、被保険者が要介護認定を受けた場合、一時金、年金、併用のいずれかの方法で保険金を受け取ることができます。

豆知識として「介護保障保険」は生命保険会社が取り扱う商品、「介護補償保険」は損害保険会社が取り扱う商品です。何が違うか分かりましたか?!

所得補償保険

所得補償保険は会社員や自営業者などが病気やケガで仕事ができなくなった場合の収入減を補う保険です。税込み年収の最大60%程度が補償され、一定期間、毎月一定の金額を受け取ることができる保険で、世帯主の収入源に備える保険となっています。

収入保障保険は世帯主である被保険者が死亡・または高度障害の場合、年金のように毎月決められた金額の給付金(もしくは一時金)を受け取ることができる保険で、世帯主の死亡・高度障害に備える保険となっています。

以上でリスク管理の分野は終了です。不安を煽られてたくさん保険を契約している方に、無駄な保険の精査をして少しでも生活を楽にさせてあげたいですね。その為にも公的保険・民間保険の内容をよく理解しましょう!