FP3級への道 ~不動産~ Chapter3

fp

不動産の所得と保有にかかる税金

不動産所得税

不動産所得税土地や家屋を購入・新築・増改築したり、贈与されたりしたとき、取得者にかかる税金です。相続による不動産の取得や借地権に対して課されません

課税標準(税額を算出するうえで基礎となる課税対象)は不動産の固定資産税評価額です。

不動産取得税の出題ポイント

  • 納税義務者:不動産の取得者(個人・法人)
  • 課税取引:不動産の売買・交換・贈与・新築・増改築
  • 課税主体:不動産がある都道府県(地方税)
  • 課税標準:固定資産税評価額(固定資産課税台帳登録価格)

不動産所得税の計算式

不動産所得税=課税標準×税率3%

※ 税率は原則4%だが、土地と住宅については2024年3月31日の取得までは3%に引き下げられている。

不動産取得税の課税標準の特例

不動産取得税には、課税標準から一定額を控除できる特例があります。これは新築・増改築だけでなく、中古住宅を取得した場合にも適用されます

不動産取得税の課税標準の特例

●新築住宅の課税標準の特例:課税標準ー1,200万円

不動産取得税 = (課税標準ー1,200万円) × 税率3%

例) 課税標準(固定資産税評価額)2,000万円の住宅の不動産取得税は、(2,000万円ー1,200万円)×0.03=240,000円

●中古住宅の課税標準の特例:課税標準ー新築時期により異なる控除額

主な要件①:床面積50m2以上240m2以下

主な要件②:1982年1月1日以降に新築された住宅、または一定の新耐震基準に適合した住宅

主な要件③:居住用、セカンドハウス。賃貸は適用不可

●宅地の課税標準の特例:課税標準 × 1/2

不動産取得税 = 課税標準 × 1/2 × 税率3%

例) 課税標準1,500万円の宅地の不動産取得税は、1,500万円×1/2×0.03=225,000円

登録免許税

登録免許税は不動産登記を行う時に課されます。

所有権移転登記をする場合、登録免許税は売主と買主に連帯して納付する義務があります。ただし、実際には売買契約等により買主が負担するのが一般的です。

登録免許税の種類と基本ポイント

●登録免許の種類

所有権保存登記新築の建物を購入したときなど、所有権を初めて登録するときの登記。
登録免許税は売主と買主が連帯して納付。
所有権移転登記不動産の売買、贈与、相続などで、所有権が移転するときの登記。
売主と買主が連帯して納付。
抵当権設定登記土地や建物を担保にして、ローンなどの抵当権を設定するときの登記。

●登録免許税の基本ポイント

納税義務者不動産登記をする者(個人・法人)
課税主体国(国税)
課税標準固定資産税評価額(固定資産課税台帳登録価格)

●登録免許税の計算式

登録免許税 = 課税標準 × 税率

消費税

不動産取引には、消費税がかかる取引(課税取引)と、かからない取引(非課税取引)があります。

●課税取引

  • 建物の譲渡(居住用も含む)
  • 建物の貸付け(居住用を除く)
  • 貸付期間が1か月未満の居住用建物の貸付け
  • 不動産の仲介手数料

●非課税取引

  • 土地の譲渡
  • 貸付期間が1か月以上の土地の貸付け
  • 貸付期間が1か月以上の居住用建物の貸付け

印紙税

印紙税は不動産売買契約書等の課税文書を作成した時に課される税金(国税)で、文書に収入印紙を貼って消印することで納税します。

土地・建物の売買で、売買契約書の原本を2通作成して売主・買主のそれぞれが所有する場合は、双方の契約書に収入印紙を貼付けし消印することが必要です

収入印紙の貼付や消印が無い場合、過怠税が課されますが、契約自体は有効です。

固定資産税

固定資産税は不動産を取得した翌年度から課税される地方税です。

●固定資産税の出題ポイント

納税義務者毎年1月1日現在、固定資産課税台帳に登録されている者
課税主体不動産がある市町村(地方税)
課税標準固定資産税評価額(固定資産課税台帳登録価格)

※ 実務上、売買契約により売主と買主の間で固定資産税の負担割合を所有期間で按分して清算することが一般的。

固定資産税の計算式

固定資産税 = 課税標準 × 税率1.4%

税率1.4%は標準税率。各市町村で変えることができる。

固定資産税の課税標準の特例

住宅用地(賃貸住宅の用地を含む)の固定資産税には、課税標準から一定額を控除できる特例があります。

●固定資産税の課税標準の特例

  • 小規模住宅用地(住宅1戸につき200m2以下の部分)・・・課税標準×1/6

固定資産税 = 課税標準×1/6 × 税率1.4%

例) 200m2で課税標準1,800万円の住宅用地の固定資産税は、1,800万円×1/6×0.014=42,000円

  • 一般住宅用地(住宅1戸につき200m2の部分)・・・課税標準×1/3

固定資産税 = 課税標準×1/3 × 税率1.4%

●新築住宅の税額軽減特例

  • 新築住宅の税額軽減・・・床面積が120m2までの部分について、新築後3年間、固定資産税が2分の1に軽減される。

※ 新築マンションや新築の長期優良住宅は5年間

都市計画税

都市計画税は、公園や道路などの都市計画事業の費用に充てるために課される地方税です。

●都市計画税の基本ポイント

納税義務者市街化区域内の土地・建物の所有者
(毎年1月1日現在、固定資産課税台帳に登録されている者)
課税主体不動産がある市町村(地方税)
課税標準固定資産税評価額

都市計画税 = 課税標準(固定資産評価額) × 制限税率0.3%

※ 制限税率は0.3%内であれば市町村が自由に決定できる。

●都市計画税の課税標準の特例

  • 小規模住宅用地(200m2以下の部分)・・・課税標準×1/3
  • 一般住宅用地(200m2の部分)・・・課税標準×2/3

住宅を購入するとこれだけ税金がかかります。

試験もそうですが、実生活でも嫌になってしまいますね。

不動産の譲渡・賃貸にかかる税金

不動産の譲渡所得

土地や建物を譲渡(売却)することで生じた所得を譲渡所得(譲渡益)といい、所得税・住民税が課せられます。譲渡所得は、他の所得と区別して計算する分離課税です。

●譲渡所得金額の算出式

譲渡所得金額(譲渡益) = 総収入金額 ー (取得費+譲渡費用)

  • 総収入金額:売却時の譲渡金額の合計額
  • 取得費:売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料、設備費などの合計額から、減価償却費相当額を差し引いた金額。また購入、贈与、相続した時に納めた登録免許税、不動産取得税、印紙税等も含まれる。※ 取得の日以降譲渡の日までに納付した固定資産税は取得費には含まれない
  • 概算取得税:買い入れた時期が古いなどのため、取得税が不明の場合には、取得費の額を譲渡価格の5%相当額にできる。また実際の取得費が譲渡価額の5%相当額を下回る場合も5%相当額にできる。
  • 譲渡費用:仲介手数料、売主負担の印紙税、建物の取り壊し費用、立退料等、売るために直接かかった費用。

例) 古い土地を5,000万円で売り、取得費が不明の場合、5%相当額の250万円を取得費にできる。

●譲渡所得の税率の出題ポイント

譲渡所得税額 = 譲渡所得金額×税率(長期なら20%短期なら39%)

長期譲渡所得譲渡した年の1月1日現在において所有期間が5年を超えるもの税率20%
(所得税15%、住民税5%)
短期譲渡所得譲渡した年の1月1日現在において所有期間が5年以内もの税率39%
(所得税30%、住民税9%)
※ 復興特別所得税が所得税に上乗せされます。15×1.021=15.315%、30×1.021=30.63%

居住用財産(マイホームの家屋、敷地)を譲渡した場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます

これを、”居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例”といいます。

●居住用財産の譲渡所得の特別控除のポイント

課税譲渡所得 = 譲渡所得金額(譲渡益) ー 3,000万円(特別控除)

  • 特別関係者(配偶者、父母、子、生計を一にする親族等)への譲渡では利用できない。⇒妻や子に居住用財産を売却しても控除は受けられない。
  • 住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに譲渡すること。
  • 前年・前々年に同じ特例を受けていると利用できない
  • 所有期間は短期でも長期でも利用できる。⇒ 所有期間は関係ない。
  • この特例によって、譲渡所得が0円になる場合も、確定申告が必要。

居住用財産の軽減税率の特例

所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合、上記の”居住用財産の譲渡所得の特別控除”後の金額のうち、6,000万円以下の部分に、14%の軽減税率が適用されます。これを、「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」といいます。6,000万円超の部分は、長期譲渡所得の税率20%のままです。

●軽減税率の特例

譲渡所得税額 = 課税長期譲渡所得金額 × 税率

課税長期譲渡所得金額所得税住民税
6,000万円以下の部分10%4%
6,000万円を超える部分15%5%
※ 復興特別所得税が所得税に上乗せされます。

特定居住用財産の買換えの特例

所有期間が10年を超える居住用財産を買い替えた場合、譲渡益に対する税金を将来に繰り延べることができます。

●特定居住用財産の買換えの特例の出題ポイント

買い替え資産の取得価格に対応する部分について、譲渡益の100%相当分の課税を繰り延べることができる。

  • 所有期間が10年超、居住期間合計が10年以上の居住用財産の譲渡。
  • 譲渡資産の対価の額(旧宅の売却額)が1億円以下であること。
  • 買い替え資産について、個人の居住の用に供する部分の床面積が50m2以上、敷地面積が500m2以下であること。

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例

被相続人の居住用財産(家屋または取り壊し後の土地)を相続して譲渡した場合、譲渡益から最高3,000万円を控除できる制度です。相続開始日3年目の年の12月31日まで、譲渡価額1億円以下の譲渡に適用されます。

損益通算・繰越控除の特例

所有期間が5年を超える居住用財産を譲渡して、新たに住宅ローンを利用した居住用財産に買い替えて損失が出たとき、その損失は他の所得と損益通算できます。また、その年に控除しきれない場合は、翌年以降3年間にわたって繰越控除できます。これを「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」といいます。

また、買い替えの場合でなくても、住宅ローンが残っていて所有期間が5年を超える居住用財産を譲渡して、その譲渡価額で住宅ローン残債を返済しきれない場合には、住宅ローン残高から譲渡価額を控除した額を限度として譲渡損失を他の所得と損益通算できます。また、その年に控除しきれない場合は、翌年以降3年間にわたって繰越控除できます。これを「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」といいます。

なお、どちらの特例も繰越控除の適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であることが要件です。

不動産所得にかかる税金

不動産の貸付けによる不動産所得には、所得税が課せられます。不動産所得の金額は、その年中の不動産所得にかかる総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。

不動産所得 = 総収入金額 ー 必要経費

総収入金額には、賃貸料のほか、敷金や保証金等のうち、賃借人に返還しなくてもよい分の金額が含まれます

損益通算できる不動産所得の損失

不動産所得に損失(赤字)が出たときは、他の所得の金額(黒字)と損益通算(差引計算)を行うことになっています。ただし、不動産所得の金額の損失のうち、次に掲げる損失の金額は、損益通算の対象となりません。

  • 別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るもの
  • 不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債(借金)の利子に相当する部分の金額

借地権にかかる税金

土地に借地権を設定し、対価として受け取った権利金などの一時金は、原則として不動産所得となります。ただし、その土地の価額の2分の1を超える権利金は、土地の一部分を譲渡したものと判断されて譲渡所得となります

不動産の有効活用

土地活用の事業方式

等価交換方式
土地所有者が土地を、デベロッパーが建設費等の事業費を拠出し、完成後の建物の床面積をそれぞれの拠出割合に応じて配分する。
良:建築資金などが必要なく安定した収入が得られる
悪:土地をデベロッパーと共有しなければならない
事業委託方式
事業計画、建設、管理運営までを業者(デベロッパー)に任せる。
良:業者の豊富な事業ノウハウの提供を受けられる
悪:事業報酬を支払わなくてはならない
土地信託方式
信託銀行に土地の管理・運営を任せ、その配当を受け取る。
良:資金調達を始め、事業の一切を信託銀行に任せられる
悪:配当は保証されず、運用実績により変動がある
定期借地権方式
一定期間、土地を借地人に賃貸して、地代を受け取る。
良:資金の負担が無い
悪:一般的に建物の賃貸収入より少ない
自己建設方式
土地・建物を自分で所有し、企画・資金調達・管理運営まですべてを自分で行う。
良:土地所有者が収益のすべてを受け取ることができる
悪:建設・管理などの一切を自分で行わなければならない

不動産投資の採算性

不動産投資をする際、採算がとれるかどうかを判断する指標として、利回り(投資金額に対する「利子も含めた年間収益」の割合)や内部収益率(IRR法)があります。

●採算性を評価する指標

単純利回り(表面利回り)年間の賃料収入を投資額(物件購入価格)で割った数値(割合)で表す。(グロス利回りともいう)

単純利回り% = 年間賃料収入 ÷ 投資額 × 100

例) 投資金額5,000万円の不動産物件で、年間の家賃収入が500万円とすると、単純利回り=500÷5,000×100=10%

純利回り(実質利回り):純収益(年間賃料収入から、手数料や税金などの諸経費を引いたもの)を投資額で割った数字で表す。このため、単純利回りよりもより現実的な数字が得られる。(ネット利回りともいう)

純利回り% = 純収益 ÷ 投資額 ×100

内部収益率(IRR法)不動産投資の採算性(収益性)の評価に用いられる。不動産投資から得られる純収益の現在価値の総和が、投資額と等しくなる場合の割引率のこと。内部収益率が大きければ、投資価値が高いと判断される。


最後なので長くなりましたが、不動産関連はこれで終了です。家を買うにもいろんな税金がかかわってきて覚えるのが大変ですね。さて次はラストの相続になります。もう少しです頑張りましょう!