FP3級への道 ~相続~ Chapter2

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相続の基本知識

相続とは

相続とは被相続人(死亡した人)の財産(資産および負債)を、相続人(配偶者・子供など)が引き継ぐことをいいます。民法上、被相続人の財産を相続する権利がある人を法定相続人といいます。法定相続人は、被相続人の配偶者と一定の血族(尊属・卑属)に限られています。被相続人が死亡すると、相続が開始されます。

法定相続人の順位

配偶者は常に法定相続人

●配偶者と共に、次の3つの順位の最上位の血族だけが法定相続人

第1順位=子(養子・非嫡出子・胎児を含む) ※子が亡くなっている場合は孫・ひ孫

第2順位=直系尊属(父・母) ※父母が亡くなっている場合は祖父母

第3順位=兄弟姉妹 ※兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪

代理相続

相続開始時に法定相続人が死亡、欠格・廃除によって、相続権がなくなっている場合、その法定相続人の直系卑属(子や孫、被相続人にとっての孫や甥・姪)が代わって相続することができます。これを代襲相続といいます。

代襲相続の仕組み

●法定相続人が1順位の子だった場合、孫→ひ孫→のように代襲していける

●法定相続人が第2順位の父母だった場合、祖父母は代襲しない ※代襲しないが相続人となる

●法定相続人が第3順位の兄弟姉妹だった場合、兄弟姉妹の子(甥・姪)まで代襲できる。兄弟姉妹の孫(甥・姪の子)は代襲できない

子の種類

子には養子非嫡出子胎児も含まれます。

相続の承認と放棄

単純承認●被相続人の資産および負債を全て無制限に相続する
●以下の申述をしなければ自動的に単純承認になる
限定承認●被相続人の資産の範囲内で負債も相続する
●相続開始を知った日から3か月以内相続人全員が共同で家庭裁判所に申述する必要がある
相続放棄●被相続人の資産および負債を全て相続しない
●相続開始を知った日から3か月以内家庭裁判所に申述する必要がある。単独で申述できる
原則として撤回できない

指定相続分と法定相続分

複数の相続人が、遺産相続をする割合を相続分といい、指定相続分法定相続分があります。

指定相続分:被相続人が遺言で指定する各相続人の相続分で、法定相続分より優先されます。

法定相続分:民法に規定されている相続分です。下記のように配分されます。

●相続人が配偶者のみの場合 ⇒ 配偶者が全て相続

●配偶者と父母が相続する場合 ⇒ 配偶者2/3、父母1/3 ※父と母で1/3を折半

●配偶者と子が相続する場合 ⇒ 配偶者1/2、子1/2 ※子の数で1/2を分配

●配偶者と兄弟姉妹が相続する場合 ⇒ 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 ※兄弟姉妹の数で1/4を分配

遺産分割の種類

相続財産を相続人で分けることを遺産分割と言います。

遺産分割には被相続人の遺言による指定分割と、共同相続人の協議で決める協議分割があります。

遺産分割では先ず指定分割が最優先されます。遺言が無い場合は協議分割を行います。協議分割を行うには、共同相続人全員が分割の内容について合意し、遺産分割協議書を作成して署名・押印する必要があります。協議が成立しない場合は、家庭裁判所の調停、もしくは審判によって分割します。

なお、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象に、配偶者の終身または一定期間の居住を認める配偶者居住権が創設されました。(2020年4月1日より)

遺産分割の方法

遺産分割には、現物分割換価分割代償分割という3つの方法があります。

現物分割遺産を個別の財産ごとにそのままの形で相続する
換価分割共同相続人のうち1人または数人が、相続により取得した
財産の全部または一部を売却処分し、その代金を分割する
代償分割1人または数人の相続人が財産を取得して、
他の共同相続人に対し自己の固有財産を分け与えるという債務を負担する

遺言と遺留分

遺言

死後の為に意思表示することを遺言、遺言によって財産を相続人などに与えることを遺贈といいます。

遺言の種類

遺留分

遺言者は”全財産を特定の人にすべてあげる”という遺言を残すことができます。しかし、これでは遺族が生活できなくなる事態も起こり得る為、民法では遺留分として、遺族が最低限相続できる財産を保証しています。

遺留分権利者(遺留分が保証されている人)は、被相続人の配偶者、子(子の代襲相続人を含む)、父母です。被相続人の兄弟姉妹に遺留分はありません

遺留分の確保には、遺言書での相続人に遺留分侵害額請求を行う必要があります。請求する権利は、

・相続の開始および遺留分の侵害を知った日から1年

・相続の開始を知らなかった場合は相続の開始から10年を過ぎると、時効で消滅します。

遺留分の割合

①遺留分権利者が父母のみの場合・・・相続財産の3分の1

②遺留分権利者が配偶者のみ、子(子の代襲相続人を含む)のみ、配偶者と子、配偶者と父母など、①以外の場合・・・相続財産の2分の1

●1人の相続分=相続財産 × 遺留分 × 法定相続分

成年後見制度

知的障害や認知症などにより、判断能力が不十分な人が、財産管理や相続で不利益を被らないよう、権利を保護する制度が成年後見制度です。

成年後見制度には、法定後見制度任意後見制度があり、法定後見制度には3つの制度があります。

後見本人が判断能力を欠く状況にある=ほとんど自分では判断できない
保佐本人が判断能力について著しく不十分=少しは自分でもできる
補助本人が判断能力について不十分=おおよそのことは自分でできる

任意後見制度は本人の判断能力が十分なうちに、将来に備えて、あらかじめ後見人を選任しておく制度です。


相続に関しては難しすぎると感じたらそこそこ覚えてあきらめましょう。普段使わないところなので頭に入ってこないかもしれません。細かいところはあきらめて他の項目で得点を稼ぐのも合格の方法です。でも理解できると遺産相続のミステリー小説がおもしろくなるかも!

次回でラストなのでがんばりましょう!