FP3級への道 ~タックスプランニング~ Chapter1

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所得税の基礎知識

税金の種類や課税方法などの問題がでます。税金を知らないと節税できません。脱税はダメです!

税金の種類

税金は国税(国に納付)と地方税(地方公共団体に納付)、直接税間接税に分けられます。

直接税は担税者(税金を負担する人)と納税義務者(実際に税金を納める人)が同一の税金で、その代表が所得税や住民税です。

間接税は担税者と納税義務者が異なることを想定している税金で、その代表が消費税です。

直接税間接税
国税所得税、法人税、相続税、贈与税消費税
地方税事業税、固定資産税、都市計画税、住民税地方消費税

所得と所得税

個人が1年間(1月1日~12月31日)に得た収入から必要経費を引いた金額を所得といいます。所得に対して課税される税金が所得税(国税)です。

所得 = 収入 – 必要経費

所得税の計算上、収入にはその年に実際に収入として確定した金額に加え、未収の売上代金も含まれます。所得は発生形態別に次の10種類に分類されます。

所得
10種
利子所得、②配当所得、③不動産所得、④事業所得、⑤給与所得
退職所得、⑦山林所得、⑧譲渡所得、 ⑨一時所得、⑩雑所得

所得税の納税義務者

所得税法における居住者(日本国内に住所がある、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人)は、原則、国内外で生じたすべての所得について、所得税の納税義務を負います非居住者は、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)に限って納税義務を負います。

非課税所得

社会政策上所得税を課すことが適当でないとされる所得は、非課税となります。

  • 生命保険契約で被保険者本人が受け取る入院給付金
  • 生活用の家具や衣服の売却による所得(骨董や美術工芸品等の売却所得は非課税にならない)
  • 相続遺贈または個人からの贈与により所得するもの。注:所得税は掛かりませんが、贈与税がかかります。

所得税の課税方法

所得税の課税方法には複数の所得をまとめて課税する総合課税と、所得を分けて個別に課税する分離課税があります。

分離課税はさらに申告分離課税と源泉分離課税に分けられます。

総合分離課税:複数の所得をまとめて総合的に課税する課税方式で、確定申告によって税金を納めます。

申告分離課税:他の所得と合算しないで、分離して税額を計算し、確定申告によってその分の税金を納めます。

源泉分離課税:所得を得た時点で一定率で税金が差し引かれて課税関係が完結します。確定申告は不要です。

総合課税利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得
一時所得、雑所得、譲渡所得(土地・建物・株式以外)
申告分離課税退職所得、譲渡所得(土地・建物・株式等)、山林所得等、
利子所得の一部(特定公社債の利子)
源泉分離課税利子所得のうち一般公社債の利子、預貯金の利子等
※利子所得は税法上総合課税、※配当所得は分離課税も選択できる、※給与所得は原則確定申告不要

復興特別所得税

復興特別所得税は、各年分の所得税の額に2.1%を乗じた額が、追加的に課税されるものです。

FPの問題には復興特別所得税は含めないと記載されている場合がほとんどです。

所得税の計算の流れ

  1. 所得金額の算出 ⇒ 10種類の所得ごとに、収入金額から必要経費や負債利子などを差し引いて所得金額を割り出す。
  2. 総所得金額の算出 ⇒ 損益通算と繰越控除を行って、総所得金額(課税標準)を算出する。
  3. 課税総所得金額の算出 ⇒ 課税標準から所得控除を差し引いて、課税金額を求める。
  4. 所得税額の算出 ⇒ 課税金額に税金を掛けて所得税額を算出し、税額控除を行う。
  5. 申告納税額の算出 ⇒ 源泉徴収分の金額を差し引いて、申告する納税額を算出する。

1.所得金額の算出

利子所得@源泉分離課税

利子所得は預貯金の利子、一般公社債の利子などの所得です。利子所得は源泉分離課税の対象で、20%(所得税15%+住民税5%)が源泉徴収されます。ただし、特定公社債等の利子は、源泉徴収後申告不要、または申告分離課税を選ぶことになります。

配当所得@総合課税

配当所得は株式の配当金や投資信託(公社債投資信託を除く)の収益分配金などによる所得です。原則として総合課税の対象で、他の所得と合算し、確定申告で税額を精算します。

配当所得 = 収入金額 ー 株式(元本)を所得するための負債利子

なお、上場株式等の配当金(配当所得)は、20%(所得税15%+住民税5%)が源泉徴収されます。その後、申告不要制度、総合課税、申告分離課税から選ぶことができます。

不動産所得@総合課税

不動産所得とは不動産の貸付けによる所得のことで、総合課税の対象です。

不動産所得 = 総収入金額 ー 必要経費(ー青色申告特別控除額) ※青色申告についてはのちに登場します。

総収入金額〇家賃、地代、礼金、更新料、借地権料、共益費など
敷金、保証金のうち賃借人に返還を要しない部分
×後に返還するものは総収入金額に含まれない
必要経費〇固定資産税、都市計画税、不動産所得税
〇修繕費、損害保険料、火災保険料、減価償却費
賃貸不動産を所得するための借入金利の利子
×賃貸不動産を所得するための元金は必要経費にならない
×所得税、住民税は必要経費にならない

なお、不動産貸し付けは事業的規模で行った場合でも、事業所得ではなく不動産所得になります。事業的規模とはアパート等では貸与可能な独立した部屋数が10室以上、戸建てでは5棟以上の貸付けを言います。(5棟10室基準)

事業所得@総合課税

事業所得は農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業による所得で、総合課税の対象です。

事業所得 = 総収入金額 ー 必要経費(ー青色申告特別控除額)

事業所得の総収入金額は、すでに手に入った収入ではなく、事業によってその年に確定した売上金額(未収額も含む)のことです。必要経費は売上原価(商品などの仕入代金)、給与・賃金、減価償却費、広告宣伝費、家賃、水道、光熱費、固定資産税などが含まれます。

減価償却費

事業で使用する機械、建物などの資産は、時の経過や利用によって年々価値が減少します。その減少する価値を帳簿上で減らしていくのが減価償却です。減価償却資産の取得金額は、資産の使用可能期間(耐用年数)の全期間にわたって分割して必要経費になります。

減価償却の方法は次のどちらかを選択します。

定額法:毎年同額を減価償却費として計上する方法

定率法:償却残高に一定の償却率を掛けて計上する方法 ※こちらは試験にでません。

減価償却費 = 取得金額 × 定額法償却率 × 業務共用月数 / 12

時の経過で価値が減少しない土地骨とう品などの資産は、減価償却資産に該当しません

給与所得@総合課税

給与所得とは会社員やアルバイトが会社から受け取る給与、賞与、各種手当て、現物給与等をいいます。

総合課税で給与等の収入金額が2,000万円超の人、給与所得、退職所得以外の所得が20万円超の人は確定申告が必です。それ以外の人は、給与支払者(事業者)が源泉徴収によって税金を支払うために確定申告は不要です。

給与所得 = 給与収入金額 ー 給与所得控除額(最低55万円)

給与等の収入金額(年収)給与所得控除
180万円以下収入金額×40%-10万円
(55万円に満たない場合は55万円)
180万円超~360万円以下収入金額×30%+8万円
360万円超~660万円以下収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円以下収入金額×10%+110万円
850万円超195万円(上限)
この計算式は問題に提示してあるので式自体は覚えなくても大丈夫です!

なお、通勤手当(電車・バス通勤者の場合は月額15万円が限度)、出張旅費非課税です。

退職所得@分離課税

退職所得とは退職時に勤務先から受け取る退職金などの所得です。

退職所得 = (収入金額 ー 退職所得控除額) × 1/2

勤続年数退職所得控除額 (勤続年数に応じる)
20年以下の場合40万円×勤続年数(最低控除額80万円)
20年超の場合800万円+70万円×(勤続年数-20万円)
※ 勤続年数1年未満の月数は切り上げて1年とします。

退職所得は分離課税です。退職時に退職所得の受給に関する申告書を提出した場合は、源泉徴収で退職所得控除が適用されて課税が終了し、確定申告は不です。申告書を提出しなかった場合は、退職所得控除が適用されずに収入金額の20%(所得税)が源泉徴収されますが、確定申告を行うことによって税金の還付を受けることができます

譲渡所得@総合課税・分離課税

譲渡所得とは書画、骨董、ゴルフ会員権、不動産、株式、等の資産を譲渡(売却)することで生じる所得で、長期譲渡所得(所有期間が5年超)短期譲渡所得(所有期間が5年以下)に分かれます。(土地・建物の場合は譲渡年の1月1日時点での所有期間)

土地・建物・株式以外の譲渡所得は総合課税(他の所得と合算)

譲渡所得 = 総収入金額 ー (取得費 + 譲渡費用) ー 特別控除額(最高50万円)

〇長期譲渡所得は、その2分の1の金額を総所得金額へ算入する

〇短期譲渡所得は、そのまま全額を総所得金額へ算入する

土地・建物の譲渡所得は申告分離課税

譲渡所得 = 総収入金額 ー (取得費 + 譲渡費用) ー 特別控除額

〇長期譲渡所得は、税率20%(所得税15%+住民税5%)

〇短期譲渡所得は、税率39%(所得税30%+住民税9%)

株式の譲渡所得は申告分離課税

譲渡所得 = 総収入金額 ー (取得費 + 譲渡費用 + 負債の利子)

〇税率は一律20%(所得税15%+住民税5%)

〇株式では長期と短期の区別はありません。

譲渡所得の計算式にある取得費とは譲渡した資産の購入費や付随費用(仲介手数料・登録免許税・印紙代など)の合計金額をいいます。取得費が不明な場合は、譲渡収入金額の5%相当額を概算取得費とすることができます

譲渡費用とは資産を譲渡する際に直接かかった費用のことで、仲介手数料、広告料、印紙代、古い建物の取り壊し費用、借家人の立退料などが含まれます。

なお、商品を商売で販売して得た所得は事業所得、山林の売却で得た所得は山林所得となります。

一時所得@総合課税

一時所得とは懸賞金付預貯金の懸賞金、競馬、競輪などの払戻金、生命保険の満期保険金解約返戻金、損害保険の満期返戻金などをいいます。

一時所得 = 総収入金額 ー 収入を得るために支出した金額 ー 特別控除額(最高50万円)

一時所得は総合課税で確定申告も必要です。その際、一時所得金額の2分の1だけを総所得金額へ算入します。

山林所得@分離課税

山林(所有期間5年超)の伐採や、立木のまま譲渡した場合に生じる所得を山林所得といいます。

山林所得 = 総収入金額 ー 必要経費 ー 特別控除額(最高50万円)(ー 青色申告特別控除額)

雑所得@総合課税

雑所得とは他のいずれの所得にも該当しない所得です。

公的年金等の雑所得国民年金、厚生年金、国民年金基金、厚生年金基金、
確定拠出年金等の年金
公的年金等以外の雑所得講演料、作家以外の者が受け取る原稿料、印税、
生命保険などの個人年金、仮想通貨の売却益

雑所得は公的年金等とそれ以外の所得に分けて計算し、それを合算します。公的年金等に係る雑所得は、公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除して算出されます。

雑所得 = 公的年金等の収入金額 - 公的年金等控除額 + 総収入金額 ー 必要経費

公的年金等控除額は、次の規定に従って算出します。雑所得は総合課税で確定申告が必要です。

こちらの表も試験では提示されるので覚える必要はありません。どこに該当するか間違えないようにしましょう。


税金の種類や課税方法、総所得金額を求める問題がよく出ます。不動産や相続はのちの章でも出てくるので、全体像を把握できるようにしっかり覚えておきましょう!